
膣内射精障害
膣内射精障害とは

膣内射精障害は、性的興奮や勃起は正常であるにもかかわらず、パートナーの膣内での射精が極めて困難、または全くできなくなる状態を指します。
マスターベーションでは問題なく射精できるのに挿入を伴う性交の時だけ射精に至れない「中折れ」が膣内射精障害の大きな特徴。
これは「射精しなければ」というプレッシャーや過去の失敗体験、妊活への焦り、パートナーへの罪悪感といった心理的な要因によって無意識にブレーキをかけてしまうことで起こると考えられています。
男性不妊の直接的な原因にもなってしまう膣内射精障害。
一人で抱え込まず、専門のクリニックで治療法を相談することが重要です。
膣内射精障害の
原因とその見極め
原因
心因性の膣内射精障害
膣内射精障害の原因の9割以上が精神的なもの。「射精しなければ」「妊娠させなければ」という過度な義務感や焦りによるプレッシャー、過去の性的な失敗体験などのトラウマ、パートナーに対する申し訳なさといった精神的な負荷が、射精というデリケートな身体反射を抑制してしまうのです。
身体性の膣内射精障害
稀に、糖尿病などによる神経の障害や一部の薬剤の副作用によって膣内射精障害が引き起こされることがあります。
見極めのポイント
心因性か身体性かを見極める最も重要なポイントは「マスターベーション」。
マスターベーションなら問題なく射精できる場合、身体的な機能は正常に機能していることの証明になるため、心因性の膣内射精障害であることがほとんどです。
一方で、マスターベーションでも射精が困難な場合は身体性の膣内射精障害を疑い、詳しく調べることでその要因を見つけ出します。
治療方法
膣内射精障害は原因の多くが心理的なものであるため、精神的なブレーキを外すアプローチが中心。
ただし、早期の妊娠を希望する場合には医療技術を用いた方法も選択されます。
心理療法
カウンセリングを通じて「射精しなければならない」というプレッシャーから心を解放するサポートを行います。
行動療法
膣内射精障害を改善するためには、次のような行動療法が有効と言われています。
マスターベーション習慣の改善
自慰行為での刺激の強さを弱めたり、体勢を工夫したりすることで、膣内での射精の感覚に慣れることを目指します。
中でも、マスターベーションエイドを用いたリハビリは有効的。
マスターベーション用の器具を机などに固定し、AVの音声や妄想のみで疑似的な性行為(腰を動かす)を行うことで、視覚刺激に頼らない本番に近い環境での射精をイメージすることができます。
段階的性交訓練(ステップワイズ法)
性行為に対して心理的なトラウマがある方に有効なのが段階的性交訓練(ステップワイズ法)。
医師の指導のもと、マスターベーションから始めて徐々にパートナーとの性的な刺激に慣れていき、最終的に膣内での射精を目指すという成功体験を積み重ねていくトレーニングです。
薬物療法
勃起が不十分で膣内への刺激が足りず射精できない「中折れ」が原因の場合、勃起の持続力を改善するためにED治療薬を処方することがあります。
内服薬ですので、他の両方と比べて即効性が高いのが特徴。膣内射精障害の方にとって勃起・膣内での射精は非常に大きな成功体験であり、自信を取り戻すきっかけとしても活用しています。
不妊治療
内服薬でも中折れしてしまう場合や妊活を目的とした場合には、陰茎に直接薬剤を注射する「ICI治療」や人工授精やシリンジ法といった「生殖補助医療(ART)」も有効です。
妻だけED?
夫婦で克服する膣内射精障害

「妻だけED」とも言われる膣内射精障害。
その克服には男性一人で悩むのではなく、パートナーとの協力体制を築いて二人三脚で取り組むことが何よりも大切です。
まず最も重要なのは「膣内射精」を性交のゴールにしないという共通認識を持つこと。
妊活中は排卵日でのSEXが大切ではありますが、「今日はできなくても大丈夫」という安心感があるだけで男性は無意識のプレッシャーを和らげることができるのです。
また、射精や挿入にこだわらず、キスや愛撫、マッサージなど、お互いが心地よいと感じるスキンシップの時間を増やすこともおすすめ。
その中で、何が気持ち良いのか、どんなことに不安を感じるのかをオープンに話し合うことによって夫婦の信頼関係が深まり、膣内射精障害の改善に近づく助けとなります。
もし妊娠を望むのであれば、夫婦で不妊治療の専門クリニックを受診することも良いでしょう。
当院にもパートナーと一緒に受診する方やパートナーに勧められて来院する男性が多くいらっしゃいます。
男性の不妊の原因や薬物療法・人工授精などについて共に学び、計画を立てるプロセスそのものが支えとなり、孤独感を解消してくれます。






