
性病
性病・性感染症(STI)とは

性病または性感染症(STI)とは、性的な接触を主な媒介として人から人へと感染が広がる疾患の総称のこと。
性交(膣性交、オーラルセックス、アナルセックス)だけでなく、血液・体液、皮膚や粘膜の直接的な接触によっても感染します。
性病の種類
性病(性感染症)は、原因となる病原体の種類によって大きく3つに分けられます。
細菌による性感染症
- クラミジア感染症
- 淋菌感染症(淋病)
- 梅毒
- 性病マイコプラズマ
- 性器カンジダ症
ウイルスによる性感染症
- 性器ヘルペス
- 尖圭コンジローマ
- エイズ
- B型肝炎
- C型肝炎
その他の性感染症
- 膣トリコモナス症
- ケジラミ症
サイレントな感染
性病の症状は、性器のかゆみや痛み、おりものの異常、発疹など、感染した病気によってさまざま。
しかし、感染しても自覚症状がほとんど現れないケースも多く見られます。
この「無症状」というのが性感染症における最も厄介な特徴のひとつ。
知らず知らずのうちに感染してしまうことがあるため、気づいた時には症状が進行していたり、大切なパートナーにうつしてしまったりする危険性が高いのです。
症状の有無にかかわらず、早期に検査を受けること。
それがご自身とパートナーの健康を守る上で極めて重要です。
当院で治療できる
主な性感染症について
クラミジア感染症
クラミジア感染症は日本で最も感染者数が多い性感染症。
その最大の特徴は男女ともに症状が極めて出にくいことです。
そのため、自覚がないままパートナーに感染を広げてしまうサイレント・インフェクションの代表格と言われています。
この感染症の本当に恐ろしい点は、無症状のまま放置されることで炎症が体の奥へと進行してしまうこと。
男性では精巣上体炎による男性不妊、女性では卵管炎や腹膜炎を引き起こし子宮外妊娠や不妊症の深刻な原因となる可能性があります。
主な症状
男性
透明でサラサラした尿道からの分泌物や軽い排尿時の痛み
女性
おりものの増加、不正出血、下腹部痛など
※いずれも軽微で他の不調と区別がつきにくい
治療方法
治療の主役はアジスロマイシンやドキシサイクリンといった抗生物質。
薬を服用することで原因菌を叩きます。
治療後は完治確認のための再検査を実施。
パートナーがいる場合は、症状がなくても同時に検査・治療を行うことが、ピンポン感染を防ぐために絶対不可欠です。
淋菌感染症(淋病)
淋菌感染症は、クラミジアと並んで頻度の高い性感染症ですが、男性において症状がはっきりと激しく現れるのが大きな特徴。
また、抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌が世界的に増加していることから、確実な診断と適切な薬剤による治療が不可欠です。
主な症状
男性
排尿時に焼けるような強い痛み、尿道から粘り気の強い黄白色の膿が大量に排出される
女性
おりものの増加、不正出血など。感染しても症状が軽いか、全く気付かないことが多い
治療方法
飲み薬だけでは不十分なケースが増えている淋菌感染症は、注射によって強力な薬剤(抗生物質)を投与する治療が第一選択となっています。
クラミジアとの混合感染も多いため、クラミジアに有効な抗生物質の飲み薬を併用することが一般的。
治療後も完治確認の検査を行い、菌が完全にいなくなったことを確かめます。
梅毒
近年、特に若年層で感染者が急増している梅毒。
時間の経過と共に全身に多様な症状を引き起こすのが大きな特徴で、その症状の多彩さから「偽装の達人(The Great Imitator)」とも呼ばれます。
また、梅毒は一度治っても再感染する可能性があります。
早期発見と確実な治療で完治できるため、特徴的な症状に気づいたら速やかに検査を受けることが重要です。
主な症状
第1期(感染後約3週間~)
感染が起きた場所(性器、口、肛門など)でできる痛みのない硬いしこりやただれ。
この症状は治療しなくても自然に消えますが、病原体は体内に残っています。
第2期(感染後数ヶ月~)
病原体が血液を介して全身に広がり、体中にバラ疹と呼ばれるピンク色の発疹が現れます。
数週間で消えるため、他の病気と間違えやすく注意が必要です。
第3期(感染後数年~)
治療を受けずに放置した場合、数年から数十年後に、心臓、血管、脳に深刻な障害を引き起こし、死に至ることもあります。
治療方法
梅毒治療の特効薬はペニシリン系の抗生物質。
病気の進行度に応じて、2週間から8週間、定期的に注射または内服を継続します。
早期に発見し、確実に治療を行えば完全に治癒させることが可能。
治療後は、RPR検査の数値がきちんと低下しているかを確認し、完治したかを判断します。
性病マイコプラズマ
比較的新しい性感染症で「第4の性病」とも呼ばれている性病マイコプラズマ。
症状はクラミジア感染症と非常によく似ており、感染しても無症状であることも多いため、気づかないまま経過してしまうケースが少なくありません。
性病マイコプラズマの厄介な点は2つ。
ひとつは、通常の性病検査のセットには含まれていないことが多く見逃されやすいこと、もう一つは、既存の抗生物質に対する薬剤耐性を持つ菌が増加していることです。
クラミジアや淋病の治療をしたのに症状が改善しない場合や原因不明の性器症状が続く場合は、性病マイコプラズマを標的とした専門的な検査と治療が必要となります。
主な症状
男性
尿道炎による排尿時の違和感や分泌物
女性
おりものの異常や骨盤内の炎症
※クラミジア感染症と同様にいずれの症状も軽微
治療方法
薬剤耐性菌が非常に多いため、複数の抗生物質を段階的に服用・投与する治療法が推奨されています。
当院では、秘尿器科の専門医による正確な診断と耐性菌の動向を熟知した上での慎重な薬剤選択を重視。
専門的な検査と治療によって完治へと導いています。
主な性感染症の検査方法
クラミジア感染症
クラミジアの診断に用いるのは核酸増幅法(NAAT)。
病原体の遺伝子を増幅して検出する検査法で、極めて高い精度を誇ります。
男性は尿、女性は膣からの分泌物を採取して検査するのが一般的。
のどに感染が疑われる場合は、うがい液や綿棒で咽頭をぬぐって検体とします。
淋菌感染症(淋病)
淋菌の検査も尿や分泌物を用いた核酸増幅法(NAAT)を採用。
しかし、淋菌は抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌が多いため、有効な抗生物質を見極める培養感受性検査を行うことがあります。
梅毒
血液検査で行われる梅毒の診断。
病原体そのものではなく、感染によって体内に作られる2種類の抗体を調べるのが特徴です。
カルジオリピンを抗原とする検査とTP抗原検査、それぞれの結果を組み合わせて現在の感染状態を正確に診断します。
性病マイコプラズマ
感染部位から採取した検体のDNAを調べるPCR検査が一般的。
男性は尿、女性は膣分泌液、のどの感染が疑われる場合はうがい液を検体とします。
また、クラミジアや淋病の症状と似ている性病マイコプラズマ。
核酸増幅法(NAAT)と併用することでより正確な診断が可能です。
性感染症治療のポイント
- 複数の性感染症を同時に発症することがあります。
- 自己判断で治療を中断しないようにしてください(治療が中途半端になると再発・悪化することがあるため)。
- 検査結果が陽性の場合はパートナーへ検査を促し、必要であれば一緒に治療を行いましょう。
- HIV感染のように潜伏期間が長い感染症は一定期間をおいての再検査が必要です。
- 性感染症は無症状のことも多いため、可能性があれば症状の有無にかかわらずすぐに検査を受けましょう。






