
TESE(精巣内精子採取術)
TESE(精巣内精子採取術)とは
精液検査で精子がまったく確認できず「無精子症」と診断された場合でも、精巣内でごく少数の精子が作られている可能性があります。
その精子を精巣の組織から探し出して採取するのがTESE(精巣内精子採取術)です。
全身麻酔下で陰嚢に小さな切開を加えて精巣内の精子がいそうな部分のごく少量の組織を採取。
熟練した技術を持つ胚培養士がその組織を顕微鏡で丹念に調べ、運良く精子が見つかればパートナーの卵子に直接注入する顕微授精(ICSI)、体外受精へとプロセスが進みます。
当院では患者様の心身の負担を考え、全身麻酔での施工が可能。
これまでお子さんを持つことを諦めていたご夫婦に新たな道を拓く、画期的な不妊治療技術なのです。
無精子症の診断

日本人男性における無精子症の割合は約1%。
100人に1人が射精された精液中に精子が全くない状態であると言われています。
しかし、無精子症は自覚症状がほとんどないため、半年以上子どもができないなど心当たりがある場合は医療機関での精液検査が不可欠。
1~7日間の禁欲期間を設け、マスターベーションで採取した精液を複数回にわたって検査します。
その原因は大きく2種類。ひとつは精管閉塞により精子は造られているが射出できない「閉塞性無精子症」、もうひとつは精巣で精子が作られていない又はわずかに作られている「非閉塞性無精子症」です。
患者様の状態に合わせたTESEを行うために無精子症の原因究明が重要。
当院ではさまざまな事前検査を行っています。
精液検査
無精子症と診断された場合でも、遠心処理で精液を濃縮することなどで微量の精子が見つかる事も。
微量でも精子が見つかれば精子を作っている証明になります。
ホルモン検査
精子形成を助ける卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌が正常かを確認する血液検査。
数日で結果が出て、閉塞性無精子症・非閉塞性無精子症など大まかな原因がわかります。
染色体検査
無精子症に関連する染色体の数の異常を診断するG-bandとY染色体の微小な欠失を確認するAZFを組み合わせた染色体検査を実施。
結果が出るまでに4週間ほどかかります。
精索静脈瘤精査
無精子症と診断された場合でも、精索静脈瘤の治療を行うことで「10%ほどの方に射出精子が確認できた」「精子回収の可能性が2.63倍あがる」といった報告があります。
そのため、当院では精索静脈瘤の有無も精査。精索静脈瘤が認められれば、TESEの前にその治療を行う場合があります。
TESEの種類
Conventional TESE
閉塞性無精子症や精子不動化抗体陽性の場合に行う30~60分の手術です。
陰嚢のシワにそって3㎝ほど皮膚を切開し、片側の精巣を糸で固定。
精巣薄膜に5㎜ほどの小切開をいれ、精巣組織の一部を採取します。
Micro TESE
非閉塞性無精子症や高度乏精子症の場合に行う2~3時間の手術です。
陰嚢のシワにそって1㎝ほど皮膚を切開し、精巣を体外に引き出し。
精巣白膜を大きく切り開いて、精子が回収できるまで精巣内をくまなく検索します。
TESEから妊娠まで

当院では1ヵ月で6~8例ほどのTESE(精巣内精子採取術)を実施。閉塞性無精子症では90%以上、非閉塞性無精子症では35~40%の方が精子を採取できています。
ただ、精子を無事に回収できたとしても、婦人科で顕微授精などの高度生殖医療を行わなければ妊娠には至りません。
そのため、当院では精子を凍結し液体窒素タンクの中で保存。
婦人科の不妊治療施設と密に連絡をとりあい、奥様の準備が整った段階でご本人・ご家族に運搬用の瓶(ドライシッパー)を運んでいただきます。
また、2022年4月よりTESE(精巣内精子採取術)が健康保険の適用対象となったことで大きく変化した男性不妊治療。
技術の進歩と制度の拡充により、無精子症でも安全に挙児を得る事ができるようになりましたので、ぜひお気軽にご相談ください。






